職人について
About Craftman

―注染の職人修業で大変なことは?

大工として10年の経験を積んで、この世界に入ってきました。今はまだ4年。とにかく仕事の流れや会社全体の業務を覚えるために、何でも経験させてもらってます。仕事で大変だと思うことはないけど…、じつは細かいことが苦手なんです(笑)。注染も細かな部分は失敗してばっかり。けど、放り出さずにコツコツ経験を積むことで、少しずつできることも増えてきました。一人前になるまでの道のりは、まだまだ遠いですね。

―どんなお客さんにつくったものを買ってもらいたいですか?

この仕事を始めて、僕自身の友だちに注染の手ぬぐいとかを見せて感想を聞いたりしたんですね。そしたら日常に使う機会がないと言われて。やっぱり、職人としては半人前な僕やけど、熟練の先輩職人の仕事はスゴイです。こう言うスゴイもんを、自分らと同世代のお客さまにも使ってもらいたいな、と思います。

―職人修業を振り返って、どんな思いですか?

17歳でこの世界に入りました。雑用係からスタートした後、職人見習を2年ほどやって、職人として仕事をさせてもらいはじめたのは20歳ちょっと前くらい。技術を教わった先輩職人の腕が良くてね。私も見ようみまねで良い勉強をさせてもらいました。今の工房に移ってきたのは25年ほど前。仕事はひと通りできるようになってたけど、ズボラでねぇ(笑)。社長にはずいぶんと怒られたし、世話もかけました。仕事の取り組み方も、それまで以上にきちんとするようになりました。

―これまで仕事してきた中でうれしかったことは、なんですか?

展示会に出品したものが優秀賞をもらったりして。同じ職人に認めてもらえるのは、やっぱりうれしいし、励みになりますね。でも私の仕事は、賞や栄誉をもらうことが目的やないから。思っていた色柄が出て、美しく仕上がったときは、やっぱりうれしいもんやで。 職人として52年間、注染にたずさわってもなお、毎日の仕事は繰り返しでなく、難しいこともあります。時間を経て増す色彩の深みに、しみじと感嘆することもあります。また、思いも寄らないズレやにじみも、同じ柄でもふたつとない味を生み出してくれます。そういう注染の奥深さを感じられることが、何よりうれしいです。

―注染職人を目指したのは、なぜですか?

大学を卒業してから就職した会社では、ずっとデスクワーク。時間の感覚も感情の動きもなく、ただひたすらに仕事をこなす日々が続いてたんです。そんなある日、旅行した奈良の土産物屋さんで出会った注染の手ぬぐいを見て、「これだ!」と思いました。どこか人間味のある線や微妙な色彩、すぐれたデザインでありながら人の手仕事らしい温もりを感じる。自分もこんなものづくりがしたいと、ひとめぼれでした。そこから迷わず転職しました。もともと手先を動かして何かをつくることが好きだったんです。だから、体を動かす職人修業に、ツライことは何もありません。毎日が楽しいです。

―職人修業でうれしかったことは何ですか?

当初から注染をやりたいと言っていたので、入るなり染めをさせてもらえたのがうれしかったです。とは言え、最初は単純な絵柄でしたが、それすら失敗の連続で申し訳なかったです。少しずつ失敗の回数は減ってきたけれど、混色はまだまだ社長に聞いてから、ということも少なくないです。今、修業をスタートして4年目。3年目ごろだったかな、はじめて浴衣を任されたときは、すごいうれしかったです。いずれは細かくて複雑な柄を任されるほどの腕になりたいですね。先輩職人の技術と感性に、早く追いつきたいです。また、若い人や外国の人にも、もっと注染の良さをアピールしたい。